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地域ごとにおまつりする最澄ゆかりのみほとけ ー人々の暮らしの中に

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とうこうじ

東光寺

滋賀県大津市

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比叡山の麓・仰木地域には最澄が彫ったと伝わるお像が集落ごとにおまつりされています。そのうちの一つである千手観音立像を伝える東光寺の境内には、地域の祈りの中心地として、人々の祈りと願いが境内に満ちていました。1530年頃に聖衆来迎寺の住職の隠居所としてはじまったと伝わる東光寺の本堂や庭園の美しさは、日々の生活の中で祈る人々の穏やかな心地を反映しているかのようです。

巡りポイント

仰木の郷でおまつりされる伝教大師ゆかりの十一面千手観世音菩薩立像。33年ごとのご開帳とその中間の中開帳で人々の前に姿を現わす秘仏です。そのような十一面千手観世音菩薩像がおまつりされる観音堂には、千手観音さまに対する人々の想いがあふれていました。僧侶の隠居寺院としてはじまったとされる東光寺の穏やかな空気とともに仰木の魅力を味わっていただきたいです。

本堂

  • 本堂
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    御本尊阿弥陀如来立像
  • 本堂
    御本尊脇侍の観音菩薩
  • 本堂
    御本尊の後ろに祀られている阿弥陀如来坐像。スタイルの良さが魅力的でした
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隠居寺としての空気を残す独特な本堂

仰木の里の歴史をまとめた「仰木村史」によれば、天文年間の1530年頃、聖衆来迎寺住職であった真玄上人が住職を後進に譲られ、隠居寺として東光寺が創建されたという。現在の本堂は、文化10年(1813)の3月に移築されてきた建物とされ、伝承では奈良にある大きな寺院の書院を移築したものと伝わる。その伝承を裏付けるように、書院建築に見られる床の間などの書院造の要素や、断面が四角となる角柱が多用されているなど、随所に本堂建築として独特な特徴がみられる。本堂中央には、ご本尊である慈覚大師円仁造立とされる阿弥陀如来立像がおまつりされている。

感想■ご住職のお話にあったように、ピリッとした緊張感に富む空気が漂う本堂建築というよりも、穏やかで安心感を感じる空気が流れていました。ご本尊の他にもおまつりされている小さなお像群は時代を経る中で、檀家さんなどからお預かりして引き受けたものとお聞きし、比叡山の麓に一大宗教空間が広がっていたことを物語っていました。

庭園

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琵琶湖周辺の景色を模した美しい庭園

本堂の近くに造られた庭園の詳細は明らかではないそう。しかしながら、池は琵琶湖、池の中の島は弁財天の聖地として名高い竹生島、築山は比叡山を模しその頂上には日吉明神をまつる小さな祠がある。いかに比叡山を含む地域一帯が愛着を持たれていたかを伝える庭園である。

感想■琵琶湖週への景色が詰め込まれているというお話を伺った上で庭園を見てみると、池の形がや島の配置など実際の形や位置関係に則って造られていることがよくわかりました。本堂の書院がある場所から障子を開けると正面に庭園があることから、日々修行に励む僧侶の方々も、修行の合間に書院から庭園をながめて一息ついていたのかなと思いを馳せました。

観音堂

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伝教大師が造立した千手観音をまつる

781年、高日山星林院で修行をしていた伝教大師は山中に光る霊木を発見し、その霊木を用いて何体かの仏像を造立したという。そのうちの1躯と伝えられているお像が観音堂にまつられる秘仏・千手観音菩薩立像である。元来、高日山星林院に安置されていたが廃れたため、寛永年間(1624)、仰木にある小椋神社の神宮寺に移された。その後、明治時代の神仏分離令により神宮寺が廃されたため、かつて源満仲公の住居があった「御所の山」に移されたという。しかしながら、「御所の山」でおまつりすることも困難になったため、伝教大師とゆかりのあるいくつかのお像を仰木の4つの集落に1躯ずつ分けておまつりしたという。そのうちの1躯である千手観音立像は、後水尾天皇の皇女であり仰木を治めていた賀子内親王(よしこないしんのう)から深く信仰され、現在お像がおさめられている厨子を寄進したという。天皇家と德川家双方にゆかりのある賀子内親王との繋がりを示すように厨子には菊の御紋と葵の御紋が刻まれている。

感想■観音堂の内部に入ると壁にいくつかの写真が掲げられていました。ご住職によると伝統的に御開帳ごとに写真を撮影しているとのことでした。時代ごとに携わってきた⼈々の顔が写真を通して⾒えることで、千手観音立像が大切にされてきた歴史の重みを感じることができました。また、観音堂の外には、御開帳を題材に地域の人々が詠んだ俳句の額が掛けられており、地域のみなさんが観音堂のご開帳をいかに楽しみにされているのかが伝わり、御開帳という文化が地域の人々の暮らしの中にあるということを強く実感しました。

report

学生レポート

立命館大学生命科学研究科1年

比叡山の麓の仰木の地に伝教大師ゆかりのお像がおまつりされていることは知りませんでした。千手観音立像がおまつりされている観音堂に足を踏み入れると、古来より身分を問わず信仰を集めた千手観音像の歴史が体感できました。多くの人々に親しみをもたれた千手観音立像のお姿を見ることができる機会を楽しみに待ちたいと思います。

history

ご由緒

天文年間、1530年頃の創建と伝わる。聖衆来迎寺住職であった真玄上人の隠居寺として創建されたそう。境内の中心に位置する本堂は、文化10年(1813)の3月に移築されたものとの記録が残り、一説には奈良県の大きなお寺の書院であったと伝わる。かつて山中にあった高日山星林院に安置されていた伝教大師作の十一面千手観世音菩薩像をまつる観音堂も管理している。

info

参拝情報

名称
霊雲山東光寺
(れいうんさんとうこうじ)
所在地
滋賀県大津市仰木5-13-52
googleMAP
参拝時間
10:00~16:00
拝観料
なし
宗派
天台宗
御本尊
阿弥陀如来
宝物殿
アクセス
公共交通機関
■現在バスの運行はありません。
駐車場
あり(自家用車用)
Webサイト
なし

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