「歴史を繋いだ想いを未来へつなげる」日本文化の魅力交流ポータル

  • Instgram
  • facebook

声明とカキツバタが境内を彩る毘沙門さまの聖地

いいね 0

たもんじ

多聞寺

兵庫県神戸市垂水区

  • 行きたい
  • 行った
神戸市の西方、かつて東西交通の要所として栄えた土地に慈覚大師円仁が創建した古刹・多聞寺が伽藍を構えています。境内には平安時代に造立された仏さまがおまつりされるほか、ご住職が奏でる声明と慈覚大師が持ち帰ってきたと伝えられるカキツバタが境内を彩ります。多聞寺は、阪神淡路大震災を乗り越え、さらに新しい姿へと境内の整備が続いています。

巡りポイント

平安時代に造立され優しい眼差しを参拝者に向ける3躯の仏さまの美しい姿は必見です。また、穴太衆積で整備される境内には職人さんの遊び心も隠されており、探し出す楽しさもあります。

ご本尊・毘沙門天像と日光・月光菩薩立像(国指定重要文化財)

  • ご本尊・毘沙門天像と日光・月光菩薩立像(国指定重要文化財)
  • ご本尊・毘沙門天像と日光・月光菩薩立像(国指定重要文化財)
  • ご本尊・毘沙門天像と日光・月光菩薩立像(国指定重要文化財)
  • ご本尊・毘沙門天像と日光・月光菩薩立像(国指定重要文化財)
  • ご本尊・毘沙門天像と日光・月光菩薩立像(国指定重要文化財)
  • ご本尊・毘沙門天像と日光・月光菩薩立像(国指定重要文化財)
  • ご本尊・毘沙門天像と日光・月光菩薩立像(国指定重要文化財)
  • いいね

慈覚大師が造立したご本尊と震災を潜り抜けた仏さま

江戸中期の正徳2年(1712)に建立された本堂中央の厨子には、ご本尊・毘沙門天立像がおまつりされる。ご本尊は慈覚大師円仁が一刀三礼により自作した毘沙門天像と伝わり、その胎内に境内の池より湧出した金銅造の毘沙門天像を安置したという。通常秘仏としておまつりされ、住職一代につき一度の御開帳とされる。ご本尊の左右には平安時代に造立された日光菩薩立像と月光菩薩立像がおまつりされている。それぞれ寄木造のお像で国の重要文化財に指定されている。阪神淡路大震災の際、須弥壇から床に落ちてしまい大破してしまったが、修復の結果以前の姿に戻ったという。また本堂内にはお前立の毘沙門天立像など様々な仏さまがおまつりされている。

感想■ご住職より、阪神淡路大震災の時の本堂の被害の状況をお聞きしました。日光菩薩立像と月光菩薩立像は床に落ち大破してしまったが、どんなに小さな破片も回収し修復を行った結果、元の姿に修復することができたとお聞きしました。このお話を受けて、地震など災害の恐ろしさを痛感するとともに、ご住職や文化庁の担当者の修復に対する熱意や技術力に圧倒されました。

阿弥陀如来坐像(国指定重要文化財)

  • 阿弥陀如来坐像(国指定重要文化財)
  • 阿弥陀如来坐像(国指定重要文化財)
  • 阿弥陀如来坐像(国指定重要文化財)
  • 阿弥陀如来坐像(国指定重要文化財)
  • いいね

下品中生印を結ぶ珍しい阿弥陀さま

阿弥陀堂の中央におまつりされる阿弥陀如来坐像は、平安時代に造立され国の重要文化財に指定されている。この阿弥陀如来坐像は下品中生印を結ぶ珍しいお像である。像高87センチで、寄木造のお像である。脇侍として右に千手観音立像を左に地蔵菩薩立像をしたがえる。

感想■金色に光り輝くその美しいお姿に息をのみました。ご住職によると、お顔の一部が黒く変色しているのは数十年前にお堂に雷が落ち火にあたったためであるそう。ご住職のお話をお聞きし、そうした災害を潜り抜け、お姿を拝することのできることの凄さを実感しました。また、ご住職は毎日のお勤めで声明を唱えるそうです。阿弥陀さまの前には声明の楽譜が置いてあり、それぞれの記号に込められている情報量に驚きました。

整備される境内とカキツバタ

  • 整備される境内とカキツバタ
  • 整備される境内とカキツバタ
  • 整備される境内とカキツバタ
  • いいね

職人の遊び心が隠されている穴太衆積の石垣に囲まれる数千輪のカキツバタ

本堂の前に築かれている石垣は穴太衆積の石垣である。古来より受け継がれている技術を用いて、一つ一つの石を積み上げて石垣を造立しているそう。完成した石垣の中には動物の姿をかたどった石があるなど職人の遊び心が隠されているという。石垣が囲む池にはカキツバタが群生している。このカキツバタはかつて慈覚大師が唐より持ち帰ってきたという伝承がある。5月頃には数千輪のカキツバタの花が池を埋め尽くすという。

感想■今も続く石垣の造営を少し見学させていただくと、岩を砕き石の形を見極めて積んでいく様子は神業のようでした。また、完成している石垣の中には愛らしい動物の姿が隠されており、探す楽しみがありました。ぜひ、隠されている動物たちの姿を見つけてほしいです。また、5月頃に満開となるカキツバタの時期にも訪問したいです。

鐘楼・仁王門・不動堂

  • 鐘楼・仁王門・不動堂
    仁王門
  • 鐘楼・仁王門・不動堂
    仁王門
  • 鐘楼・仁王門・不動堂
    仁王門
  • 鐘楼・仁王門・不動堂
    鐘楼
  • 鐘楼・仁王門・不動堂
    不動堂
  • いいね

修復と再建が続く境内の諸堂

多聞寺の境内では修復と再建が行われている。本堂前に建てられている鐘楼は天保14年(1843)に再建された建物である。平成10年には落雷の被害にあったが修復が完了し往時の姿を取り戻している。また鐘楼にかけられていた梵鐘は太平洋戦争中の金属供出により失ってしまったが、昭和37年(1962)に再鋳造された。境内の入口に建つ仁王門は天明4年(1784)に再建された建物であるとされ、もとの場所から2度の移転の結果現在の場所建つ。平成2年(1990)に仁王像ともに改修が行われた。鎌倉時代から室町時代にかけての造立と伝えられる仁王像を造立当初の姿に戻すことを計画中であるという。仁王門前の道をはさんで反対側に建てられている不動堂は、平成24年にコウヤマキを使い再建されたお堂である。内部には不動明王像がおまつりされている。

感想■多聞寺の境内各所で再建や修復・改修工事が行われているという。阪神淡路大震災などで多大な被害を受けながらも境内を発展させていくご住職の熱意に圧倒されました。数年後、数十年後の多聞寺の境内がどのような姿になっているのか楽しみです。

report

学生レポート

立命館大学生命科学研究科3年

今回の訪問では、阪神大震災の際に須弥壇より落下しバラバラになるも修復により蘇った日光菩薩と月光菩薩像の美しいお姿と声明に対するご住職の情熱が印象に残っています。
ご住職に本堂の内部をご案内いただいている際、重要文化財に指定されている日光菩薩と月光菩薩像は落下したことでバラバラになってしまったが2年近い修復によりもとの姿でお帰りになったとお聞きしました。このお話をお聞きし、今までさまざまなお寺でたくさんの仏さまにお参りしてきましたが、数百年・千年以上昔の仏さまにお参りできることの凄さを改めて痛感するとともに、バラバラの状態のお姿をもとの姿に修復できる技術力にも圧倒されました。
また、今回ご住職がお勤めの際に唱える声明の譜面を見せていただき、声明の表現の多様さの一端を垣間見ることができました。今まで法要でその一部をお聞きしたことはありましたが、実際の譜面は初めて見ました。譜面を実際に見てみるとどのように唱えるのか詳細に書き込まれており、そこから読み取り実際に唱えることの凄さを実感しました。

history

ご由緒

貞観年間(859 - 877)、清和天皇の勅願により慈覚大師が創建した。その後伽藍が焼失してしまうが、花山天皇の勅により明観上人が再興した。明石西国霊場や神戸十三仏霊場の札所として知られているほか、境内のカキツバタは「こうべ花の名所」として数えられ多くの参拝者に親しまれている。ご本尊は秘仏・毘沙門天立像。

info

参拝情報

名称
吉祥山多聞寺
(きちじょうざんたもんじ)
所在地
兵庫県神戸市垂水区多聞台2-2-75
googleMAP
参拝時間
堂内参拝は事前予約
拝観料
志納
宗派
天台宗
御本尊
毘沙門天
宝物殿
アクセス
【公共交通機関】
 ・JR山陽本線「舞子駅」から神戸市バス・山陽バス54系統(学園都市駅行き)で「多聞寺前バス停」下車すぐ。
 ・神戸市営地下鉄西神・山手線「学園都市駅」から神戸市バス・山陽バス54系統(舞子駅行き)で「かきつばた多聞寺バス停」下車すぐ。
【自動車】
 ・東より、第二神明道路「高丸IC」から約10分。
 ・西より、第二神明道路「大蔵谷IC」から約10分。
 ・北より、神戸淡路鳴門自動車道「布施畑IC」から約15分。
 ・南より、国道2号線「舞子駅前交差点」から北上約10分。
 ※山門を過ぎてすぐ右手に駐車場あり。
駐車場
有り

近くの寺院を巡ろう