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栄西が構築した密教世界が広がる

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きんざんじ

金山寺

岡山県岡山市北区

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今より1300年以上もの昔、報恩大師という僧侶によって金山寺の歴史は始まりました。その数百年後、後に日本の仏教界を大きく変えた栄西が、金山寺にて修行に励むことになります。 たくさんの文化財が伝わり、往時の姿を取り戻すべく復興中の境内を巡り、歴代の高僧たちの祈りが重厚的に交差しあう金山寺の魅力を語ります。

巡りポイント

報恩大師が開き1400年近くの歴史をほこる金山寺。その金山寺の境内には、多くの僧侶や文化人が集ったといいます。そのことを示すように、境内には貴重な文化財の数々が伝えられてきました。本堂の復興が進む千手観音の霊場を巡りましょう。

仁王門(岡山市指定文化財)

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池田光政により寄進された雄大な門

金山寺の入り口に堂々たる姿で参拝者を待ち受ける仁王門は、1645年(正保2)に池田光政により寄進された建物である。仁王門には、鎌倉時代に造立された仁王像がにらみをきかせている。仁王門には金山寺の山号である「銘金山」と揮毫された扁額が掲げられている。この扁額は、曼殊院を整備し一流の文化人として知られた後水尾天皇の猶子・良尚法親王により記されたもので、1660年(万治3年)、仁王門に奉安された。

感想■集落の中に突如として現れる仁王門の重厚さに圧倒されることでしょう。仁王門に掲げられる扁額は、浅草寺の雷門の扁額も記したという良尚法親王の手によるとのことでした。岡山県随一の大寺院として隆盛を極め、多くの文化人が訪れた金山寺の姿を想像しました。

客殿(内仏殿及び灌頂堂)

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栄西の祈りの空間が広がる

江戸時代、岡山藩により寄進された1110平米にもなる広大な建築である。全3回の増改築が行われ、庫裏や書院、茶室、内仏殿兼灌頂堂から構成される。日ごろお勤めをする内仏殿には、平安時代に造立され江戸時代に修復された阿弥陀三尊像がまつられる。天井には近年復元された極彩色の天蓋や、堂内壁面に描かれた二十五菩薩来迎図や水鳥樹林、八功徳水などの極彩色の壁画に彩られる。内仏殿は、かつて金山寺で修行した栄西を祖とする天台宗の法流・葉上流の伝法灌頂をする時は灌頂堂として使われる。

感想■中央におまつりされる阿弥陀三尊像を中心に、極彩色の荘厳具や壁画に彩られる室内の美しさに圧倒されました。この美しい仏たちの空間にしばしの間、時を忘れることでしょう。

書院

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客殿の奥に広がる憩いの空間

客殿と接続している書院は、金山寺を参拝した藩主・池田公が休憩をするための場所である。書院の襖絵は逆遠近法で描かれ、定められた箇所を見ながら左右に動くと絵も動いているように見える。実際に使用されていたお風呂や雪隠、茶室などもあり、池田公がくつろいだ空間を味わうことができる。

感想■藩主がくつろぐための空間ということで、内仏殿の厳粛な空気感とは打って変わり、ゆったりとした時間が流れていました。また、茶室やお庭だけでなくお風呂まであることに驚きました。一日ゆっくりと過ごすことができるような空間が広がり、池田公が金山寺の風景を気に入っていたのかなと想像が膨らみます。

仮本堂

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復興が待たれる金山寺の中心の建物

階段を登った先には、かつて宇喜多直家公が寄進した六間四面の本堂があった。しかしながら、平成24年(2012)12月に火災が発生し全焼してしまった。礎石が残る本堂跡の周囲には火災の激しさを物語る痕跡が残る。本堂を復興するまでの間、その本堂跡地に仮本堂が建てられ、寄進された仮のご本尊がおまつりされている。境内にある樹齢200年の檜を根付きのまま彫り上げる『立木工法』による7mの巨大な千手観音の造立を計画しているという。

感想■かつて本堂があったという場所を訪れると、火災の激しさを物語るように一部分が炭化した木の柱が残されていました。お寺にとって火災がいかに怖いものかを改めて実感しました。7mにもなる立木の千手観音像のお姿をいつか拝したいです。

開山堂

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天台宗の僧侶の姿をする珍しい栄西像

本堂跡より裏手の山道を登ると、金山寺に関係する僧侶の方々をおまつりする開山堂にたどり着く。開山堂の内部には、金山寺を開いた報恩大師とその弟子の心浄大師、中興の栄西禅師のお像をおまつりする。通常、臨済宗の祖師である栄西は、曲六に座り座禅を組む禅僧の姿をしているが、開山堂のお像は七条袈裟をつける天台宗の高僧の姿をしている。

感想■臨済宗の祖として誰もが知る栄西が、天台密教の大家としての側面もあるとは知りませんでした。若き日の密教僧としての栄西さまのお姿を伝えていくことが金山寺の使命とお話しするご住職の姿が印象的でした。

三重塔(岡山県指定重要文化財)

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境内を見渡す山中にそびえ立つ三重塔

境内の最高所に建つ三重塔は、天明年間に建立されたという。塔内初層には、一字金輪像がおまつりされている。初層内部は極彩色の壁画で彩られ、見る者を圧倒する密教空間が広がる。

感想■三重塔内部の一字金輪像は岡山市街地の方向を向いているそうです。その姿は、まるで岡山にくらす人々を見守っているようでした。一字金輪像の周囲を彩る極彩色の壁画も必見です。

護摩堂(岡山県指定重要文化財)

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日本で唯一残る宇喜多家ゆかりの建物

本堂跡地のすぐ下にある護摩堂は、本堂と同様に宇喜多直家公が寄進した建物である。かつて護摩堂内部には、いずれも岡山県指定重要文化財である宇喜多直家造立の不動明王像、平安期に造られた阿弥陀如来像、鎌倉期に造られた元三大師像の3躯がまつられていたが、本堂が焼失したときに本堂内に移されており、焼失してしまった。現在の護摩堂には、そのことを不憫に思われた叡南覺範大僧正により寄進された平安時代造立の不動明王立像がおまつりされる。

感想■境内に残る護摩堂は、関ヶ原の戦いでの敗北により大名家として途絶えてしまった宇喜多家に関係する唯一の建物とお聞きしました。護摩堂の質実剛健たる姿は、宇喜多直家公の姿をうつしているようでした。

温座と会陽

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金山寺に伝わる2つの大事な行事

金山寺において最も大切な行事が、報恩大師が始めたとされる「温座秘密陀羅尼会」略して「温座」である。毎年1月に行われる修正会にあたる法会で、千手観音を本尊に密教修法の千手観音供を1週間で168座、助勤の僧侶が36000遍の大悲心陀羅尼を唱える過酷な密教修法。法会は長時間にわたり僧侶の座る礼盤の座が体温で冷えぬことから「温座」と名付けられたという。記録によると、明治維新をきっかけに断絶してしまったが、市民参加型の法会にし近年再興された。もう一つの行事「会陽」は、日本三大奇祭の一つとされ、裸の男たちが温座に依って祈祷された護符である宝木を巡って争奪戦を繰り広げる祭りである。

感想■一度廃絶した温座を再興したお話をお聞きし、廃絶したものを再興することの難しさを知りました。市民参加型の行事として親しまれる温座と会陽の様子を見てみたいです。

report

学生レポート

立命館大学生命科学研究科1年

金山寺の境内を巡ると、密教的な華やかさとともに、1300年以上もの歴史による重厚さが組み合わさった不思議な感覚を覚えます。
これは、金山寺の歴史の中で様々な信仰が学ばれてきた故なのかもしれません。みなさんも是非、この感覚を味わいに訪れてみてください。

history

ご由緒

報恩大師により開かれた48ヶ所の寺である備前四十八ケ寺の本山で、奈良時代の749年に開かれた岡山県最古の寺院と伝わる。平安時代の末期には、日本臨済宗の祖である栄西が修行をし、栄西の思想を反映している天台宗葉上流の中心寺院として大いに栄えた。現在の伽藍の多くは、岡山藩主・池田家の手により整えられた。2012年に宇喜多直家公寄進の本堂が焼失したが、現在その復興を進めている。

info

参拝情報

名称
銘金山金山寺
(めいきんさんきんざんじ)
所在地
岡山県岡山市北区金山寺481
googleMAP
参拝時間
客殿・庭園 10:00から16:30
拝観料
大人500円
子ども300円(小学生まで)
宗派
天台宗
御本尊
千手観音
宝物殿
要確認
アクセス
公共交通機関
■JR岡山駅からタクシー約20分
お車
■山陽自動車道岡山ICから約30分
駐車場
有(山門前5台、護摩堂横50台)
Webサイト
https://www.kinzanji.net/

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