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2体の観音さまを本尊としておまつりする観音さまの聖地

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ぶんぽうじ

文保寺

兵庫県丹波篠山市

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丹波篠山市に伽藍を構える紅葉で有名な天台宗寺院3ヶ寺からなる「丹波篠山もみじ三山」。そのうちの1ヶ寺である文保寺は、飛鳥時代に創建されたと伝えられている丹波地方を代表する古刹で、紫陽花や紅葉などが彩る境内には観音さまをはじめとする様々な仏さまがおまつりされています。平成30年には再興より数えて700年を迎え、整備された文保寺には、たくさんの参拝者が訪れています。

巡りポイント

飛鳥時代以来のご本尊・聖観音さまと再興時からのご本尊・千手観音さまが横並びでおまつりされている本堂、1378年に造立されたことが判明した筋骨隆々で迫力ある仁王さまのお姿は必見です。また、初夏には紫陽花、秋にはもみじの紅葉が境内一帯を彩ります。

ご本尊・聖観音像と千手観音像

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2躯の観音さまがご本尊としておまつりされる

本堂の中央には大きな厨子が安置され、その内部に飛鳥時代からのご本尊・聖観音像と再興時からのご本尊・千手観音像がおまつりされている。聖観音像は、645年の開山の際に法道仙人が自ら刻んだ像であると伝えられている。平安時代に勃発した承平・天慶の乱の際一時行方不明となるが、再興後しばらくして文保寺南方の本庄という集落の村人の手により守られていたことがわかり文保寺に帰還した。千手観音像は、鎌倉時代の再興の際に比叡山より迎えたお像であると伝えられ、慈覚大師円仁により造立されたお像であるという。聖観音像と千手観音像は秘仏であるため、通常はそのお姿を直接拝することはできない。ご本尊の両脇には毘沙門天立像と不動明王立像がおまつりされている。

感想■ご住職がお話しされた2躯の観音さまがおまつりされるようになった様々な逸話が興味深く印象深く心に残っています。その中でも聖観音さまが戦乱の際に助け出され、後の時代に発見されるまで近くの集落で守り伝えられていたというお話が印象的で、戦火に見舞われるお寺から必死にご本尊を逃がした人々、数百年間守り伝える人々の存在が感じられ、そのような人々の存在があったからこそ今に文化が伝えられているのだと考えさせられました。

本堂

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江戸時代後期の名工・六代目「中井権次橘正貞」による彫刻に囲まれる

境内の最奥に建つ本堂は、江戸時代中期頃に再建されたとされる建物である。建物の随所に、江戸時代後期の名工の一人として知られ、丹波地方を中心に活躍した六代目「中井権次橘正貞」による彫刻が飾られている。本堂内には、極楽浄土に住んで美しい声で歌うという迦陵頻伽などが、また本堂正面の扉には、中国古代の李白や郭子儀などの人物と動物の透かし彫りがあり、向拝正面中央に見事な龍の彫刻が施されている。

感想■向拝部分の龍の彫刻がかっこよく心に残りました。雲の中よりとぐろを巻きながらこちらに飛び出してくる様子がリアルに彫られていて、生きている生き物が目の前にいるかのように思えるほど素晴らしい出来の彫刻でした。六代目「中井権次橘正貞」は龍の彫刻が得意であったとお聞きし、その妙技に圧倒されました。丹波地方の寺社仏閣には六代目「中井権次橘正貞」が手掛けた様々な彫刻が伝えられているとお聞きしたので、巡ってみたいなと思います。

梵鐘

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太平洋戦争の金属供出を潜り抜けた鐘

本堂前の鐘楼には、梵鐘がかけられている。この梵鐘は太平洋戦争時に金属供出となり、その痕跡が鐘に残されている。鐘の表面をよく見ると、穴があけられていることがわかる。これは、金属供出の際に梵鐘の金属成分を調べる際に開けられた穴であるという。

感想■何気なく鐘楼に懸けられている梵鐘に、激動の歴史を潜り抜けてきた痕跡があることに驚きました。実際に金属供出がどのようにおこなわれていたのか感じられる鐘を初めて見て、戦時下の厳しい生活や影響がどのようなものであったのか感じさせられました。

仁王門と仁王像(ともに丹波篠山市指定文化財)

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中世より文保寺を守る迫力ある仁王さま

文保寺の入口にそびえる仁王門は、明智光秀による丹波攻めの後の天正年間頃に再建された建物であると伝わる。もとの仁王門は、鎌倉に伽藍を構える建長寺の門を模して1385年に建立されていたという。三間一戸で、屋根は入母屋造、全体的には和様を貴重としているが、肘木には唐様形式が見て取れるという。大正時代に下層の解体修復が行われた。仁王門内には、永和4年(1378年)に造立されたことが判明した仁王像がおまつりされている。2018年の解体修理の際に銘文が発見され、永和4年(1378年)に造立されたこと、侍従法眼と弁法橋という仏師により造立されたことが判明した。

感想■仁王門の両脇より見張る仁王像の目力に圧倒されました。門の中央を通ろうとすると左右から力強い目力を感じ、背筋がピンと伸びる感覚を覚えました。近づいてみると、体のいたるところに力こぶが盛り上がる筋骨隆々のお姿は迫力があり、その筋肉美に惹かれました。また、丹波攻めの際に門は焼けてしまったそうですが、それ以前に造立された仁王像がどのように守り伝えられたのか興味がわきました。

眞如院・大勝院・觀明院

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文保寺を守る塔頭寺院

仁王門より本堂へつながる参道沿いには、文保寺の塔頭寺院が軒を連ねている。大勝院は平安時代後期に造立されたと考えられている十一面観音立像をご本尊としておまつりしている。この十一面観音立像は丹波篠山市指定文化財に指定されている。また眞如院は阿弥陀如来像、觀明院は弥陀三尊像をご本尊としておまつりしているという。なお文保寺の住職は、眞如院・大勝院・觀明院の住職が交代して務めているという。

感想■文保寺をお守りする塔頭のうち大勝院におまいりさせていただきました。大勝院のご本尊さまはすらっとした姿で立ち、優しい眼差しを参拝者に向けており、お像から感じるその優しさや穏やかさが印象的でした。

report

学生レポート

立命館大学生命科学研究科2年

今回の訪問では、幾度もの戦乱に巻き込まれながらも不死鳥のごとく再興されてきた文保寺の歴史の奥深さとそれを実現させてきた文保寺に対する人々の信仰の篤さを肌で感じました。ご本尊が2躯おまつりされていることを不思議に思っていましたが、そこには戦乱からご本尊を守り伝えた人々と100年以上の年月を経て文保寺に戻ってきたという歴史の存在をお聞きし、感銘を受けました。
また、威風堂々とする迫力ある本堂や伝えられている仏像などを見ていると皇族とのゆかりがある格式高い文保寺の姿を垣間見るとともに、そのお像とともにおまつりされる山の神の札や小さな石仏からは、地域の人々の拠所としての文保寺の姿も感じられました。さらに、仁王像におまつりされている仁王像の力強いお姿が心に深く残っています。力こぶを盛り上げ、迫力ある眼差しを参拝者にむけるそのお姿は中世より文保寺を守る覇気を感じさせました。

history

ご由緒

大化元年(645)に法道仙人により創建されたと伝えられている古刹。もとは聖備山長流寺(しょうびざんちょうりゅうじ)と称されていたという。創建時の本尊は法道仙人が造立したという聖観音像である。その後、947年に承平・天慶の乱の煽りを受けて全山焼失してしまう。その際に聖観音像は行方不明となってしまう。その約300年後、花園天皇の夢枕に文保寺を再建するようにというお告げとともに仙人が立ったという。その際、比叡山より慈覚大師円仁作の千手観音像が迎えられ、再興後の本尊となった。しばらくして、文保寺の南に位置する本庄集落に聖観音像が守られていることが判明し、文保寺に帰還し2躯の本尊がおまつりされるようになった。文保年間(1317)には、宝鏡寺宮門跡一品親王より寺号「文保寺」の勅額を賜ったことで「松尾山文保寺」と改められ現在に伝わる。戦国時代には明智光秀の丹波攻めにより、またも全山焼失の被害を被るが、江戸時代にかけて伽藍が整備された。

info

参拝情報

名称
松尾山文保寺
(しょうびさんぶんぽうじ)
所在地
兵庫県丹波篠山市味間南1097
googleMAP
参拝時間
寺務所は9時から17時
拝観料
入山志納金(もみじ三山開催中の11月のみ)
大人:500円、
20名以上の団体はお一人400円、
障がい者及び高校生以下は無料
宗派
天台宗
御本尊
聖観音・千手観音
宝物殿
アクセス
【お車でお越しの場合】
舞鶴若狭道丹南篠山口ICより約7分
【公共交通機関でお越しの場合】
JR福知山線 篠山口駅が最寄駅(JR篠山口駅から車約7分)
駐車場
無料 50台(大型バス可)
Webサイト
https://tanbasasayama-bunpoji.com/
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