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山深き霊地に神仏がまつられる

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がくえんじ

鰐淵寺

島根県出雲市

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出雲の山中に伽藍を構える浮浪山鰐淵寺。この地で修行に励んでいた智春(ちしゅん)上人の祈りによって推古天皇の眼病が平癒したことから推古天皇の願いによって境内が整えられたという山陰地方屈指の名刹です。古来より、山岳修行の霊地として多くの僧侶が集い、神々と仏様をともに大切にまつる神仏習合のお寺として歴史を紡いできました。明治時代になり多くの寺社が神仏分離の影響を受ける中で、鰐淵寺は神仏習合の祈りを今日まで伝えています。

巡りポイント

神々と仏様を大切にまつる神仏習合の祈りが境内に満たされています。往時の鰐淵寺の隆盛を表す堂々たる根本堂や山岳修行の霊地・蔵王堂からは、鰐淵寺の悠久の歴史が感じられます。

本坊・御成門

  • 本坊・御成門
    御成門
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    御成門
  • 本坊・御成門
    本坊
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かつて山上に軒を連ねた僧房の姿を伝える

参拝受付の隣には、現在の鰐淵寺の本坊と御成門が建つ。本坊の建物は松本坊という僧房の建物で、18世紀中期に建立されたと推定されている。正面に向拝が付く寄棟造、鉄板葺の建物。

 

本坊に隣接して建つ御成門は、19世紀中期頃に建立されたと考えられている建物。平唐門という形式で建てられている門で、左右に袖塀が付く。

感想■御本尊様の眼光は鋭く、その眼差しの先に座ると自然と自分の背筋が伸びるような、力強い迫力を感じました。大きな火炎を背負い、右手に剣を、左手に羂索を持つお姿からは、数百年にわたり松江の人々の祈りを受け止め続ける祈りの歴史を感じました。

参道

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  • 参道
  • 参道
  • 参道
    明治時代の鰐淵寺の境内
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108段の石段の左右に僧房の跡が残る

本坊から根本堂までは108段の石段が設けられている。その石段の左右には、かつて軒を連ねていた僧房を構成していた石垣や礎石が残る。

感想■かつて本坊(旧松本坊)から根本堂までの参道周辺には、僧房が約13坊ほど軒を連ねていたそう。苔むした石垣や礎石は霊地としての厳粛さを感じさせるとともに、時の移ろいとともに自然へと回帰していく自然の循環を感じました。

根本堂(出雲市指定文化財)

  • 根本堂(出雲市指定文化財)
  • 根本堂(出雲市指定文化財)
  • 根本堂(出雲市指定文化財)
  • 根本堂(出雲市指定文化財)
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鰐淵寺の中心となる堂々たる大堂

根本堂は、桁行5間・梁間5間、入母屋造、正面に唐破風が付く杮葺の建物。毛利輝元公によって安土桃山時代に建立された建物であるとも、建物を構成する部材に施された彫刻意匠の様式から18世紀中期頃の建物とも言われている。19世紀頃に大幅な修復・改築が実施されたという。

 

参拝者が礼拝する外陣、御本尊様をおまつりする内陣ともに土間となっており、建物上部を朱色に塗る点が特徴的である。

 

堂内中央の厨子の内部には、御本尊として千手観音像と薬師如来像を並列しておまつりしている。中世の鰐淵寺は北院と南院に分かれていたといい、北院の御本尊が千手観音像、南院の御本尊が薬師如来像であったという。正平10年(1355)頃に、現在のように北院・南院それぞれの御本尊をともにおまつりするようになったと考えられている。

感想■木々の間から鮮やかな朱色と鋭く曲線的な屋根が印象的でした。根本堂の放つ力強さは山岳修行の厳しさを表しているようにも感じ、鰐淵寺の歴史を表しているかのように思いました。

釈迦堂

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木々の間にひっそりと建つ鰐淵寺最古の建物

釈迦堂は根本堂正面に向かって右手側に建つ。桁行3間・梁間3間から構成される建物で、17世紀中頃から後半にかけて建立されたと考えられている鰐淵寺最古の建物として知られている。

 

松江・出雲地方の歴史等を江戸時代にまとめた『雲陽誌』では、法華三昧堂と記されており、往時の釈迦堂の役割を伝えている。

感想■木々の間にひっそりと建つ釈迦堂は、修行道場としての厳粛なお堂の姿を感じさせました。鰐淵寺最古の建物ということで、どのような歴史が秘められているのか興味を抱きました。

鐘楼・梵鐘

  • 鐘楼・梵鐘
    鐘楼
  • 鐘楼・梵鐘
    梵鐘
  • 鐘楼・梵鐘
    梵鐘
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武蔵坊弁慶との逸話を伝える梵鐘が吊るされていた建物

釈迦堂と根本堂の間に建つ鐘楼は、伝えられている棟札から正徳3年(1713)に建てられた建物であると考えられている。現在の鐘楼には、昭和に鋳造された梵鐘が吊るされている。

 

鐘楼にかつて吊るされていた梵鐘には銘文が残り、寿永2年(1183)に鋳造後、現在の鳥取県倉吉市にあった大日堂上院に納められたという。武蔵坊弁慶は、一夜のうちにこの梵鐘を大山から鰐淵寺まで運んできたという逸話が残されている。

感想■かつて鐘楼に吊るされていた梵鐘には武蔵坊弁慶にまつわる逸話が残されているとお聞きしました。山陰地方屈指の霊地として全国から人々が集った鰐淵寺の歴史を象徴しているように思いました。

常行堂・摩陀羅神社・三本杉

  • 常行堂・摩陀羅神社・三本杉
    手前:常行堂、後ろ:摩陀羅神社
  • 常行堂・摩陀羅神社・三本杉
    手前:常行堂、後ろ:摩陀羅神社
  • 常行堂・摩陀羅神社・三本杉
    摩陀羅神社
  • 常行堂・摩陀羅神社・三本杉
    三本杉
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神仏習合を伝える鰐淵寺を象徴する建物

根本堂の正面に向かって左側(南側)には、慈覚大師お手植えとされる三本杉が枝を伸ばし、さらに常行堂と摩陀羅神社が建つ。

 

常行堂は寄棟造の建物で、江戸時代にまとめられた史料に寛政7年(1795)に建立されたとの記録が残る。

 

摩陀羅神社は、桁行2間・梁間2間の出雲地方に多く見られる大社造の神社建築である。天保5年(1834)に記された棟札が残ることから、19世紀前期に建立された建物であると考えられている。

 

まつられている摩陀羅神(またらじん)は、第3代天台座主を務めた慈覚大師円仁が唐からの帰国の際に感得された神様で、阿弥陀如来を信仰する行者の守護神とされた。そのため、天台宗寺院では、念仏を唱える常行堂の内部に秘されてまつられていることが多い。また、芸能の神としても信仰を集めている。

 

仏堂である常行堂と神社建築である摩陀羅神社が1つの廊でつながるという独特な建築空間が広がっている。この独特な建物配置は、寛文7年(1667)、これまで常行堂の「後戸の神」として常行堂内部にまつられていた摩陀羅神が独立してまつられるように変更されたためであるという。

感想■仏堂である常行堂と神社建築である摩陀羅神社が並列している空間に興味を抱きました。「鰐淵寺は神様・仏様をともに大切にまつるお寺」というご住職のお話しを象徴している建物であると感じました。

山王七仏堂

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神々と仏様を大切にまつる

山王七仏堂は本坊から浮浪の滝へと進む参道に建つ。現在の山王七仏堂は、昭和30年代にコンクリートを用いて再建された建物。当時、コンクリートの建物は木造建築よりも耐久性が高いと言われていたため、コンクリートを使用して再建されたという。

 

現在の建物より以前の山王七仏堂は、江戸時代に建立された建物であったと推定され、『雲陽誌』によると、山王・祇園・菅神の三神をまつっていたという。

 

このことを示すように、山王七仏堂には平安時代に造立されたと考えられている牛頭天王坐像(島根県指定文化財)がまつられていたとされていたという。また、島根県指定文化財の銅造如来形立像も山王七仏堂でまつられていたという。

感想■深い木立の中に建つ山王七仏堂は、かつて様々な神々や仏様が一同にまつられていたことを示すように、厳かな空気に包まれていました。神々と仏様が共存する霊地であることを強く感じた建物でした。

蔵王堂・浮浪の滝

  • 蔵王堂・浮浪の滝
    浮浪の滝・蔵王堂
  • 蔵王堂・浮浪の滝
    浮浪の滝・蔵王堂
  • 蔵王堂・浮浪の滝
    浮浪の滝・蔵王堂へと続く参道
  • 蔵王堂・浮浪の滝
    浮浪の滝・蔵王堂へと続く参道
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滝壺の奥に建物が建つ鰐淵寺創建の地

鰐淵寺川を上流へと進んだ先に鰐淵寺創建の地とされる浮浪の滝はある。

 

寺伝によると、長野県から当地を訪れた智春(ちしゅん)上人が浮浪の滝のほとりで修行をしていた際に滝壺に落としてしまった仏器を、鰐(わにざめ)が智春上人にお返ししたという。この逸話から『鰐淵寺』というお寺の名前になったとされる。

 

浮浪の滝の滝壺の奥の岸壁には、蔵王権現をまつる蔵王堂が建つ。蔵王堂は、正面3間、入母屋造妻入の建物。昭和58年(1983)に再建された建物であるという。

 

蔵王権現の霊地として古来より行者が修行に励む行場であり、武蔵坊弁慶も浮浪の滝で修行したと伝えられている。

感想■鰐淵寺川を渡り参道を進むこと約10分。急峻な岸壁から落ちる浮浪の滝の奥に蔵王堂が建てられている景観を見ることができました。どのように急峻な岸壁に建物を建てたのか興味を抱くとともに、山岳修行の聖地として行者が修行に励んだ歴史を垣間見ることができました。

report

学生レポート

立命館大学 博士課程

雨の中で伽藍を拝見し、その大きさと静けさに圧倒されました。霧に包まれた山の中に、寺院は自然と調和しながら佇み、長い歴史の重みを感じさせました。滝行の場まで登ったとき、振り返ると来た道が遠く霞み、私たちが古人をどれほど理解していないかを思い知らされました。

外国人として学ぶ内容は多岐にわたり、とりわけ「わに」の由来について、多角的な視点からお話を伺えたことが印象に残っています。異なる解釈を受け入れ、他者との対話の中で理解を深める大切さを実感しました。さらに、「なぜ」という問いを大切にするご住職のお言葉が心に響きました。観音像の配置の意味や信仰の背景、海との関わりなどを通じて、研究は机上の思索にとどまらず、現場で感じ、考え、探究を続けることが重要だと学びました。この教えは、私にとって大きな励ましとなりました。

history

ご由緒

推古天皇2年(594)、信濃国の智春(ちしゅん)上人が当地を訪れ、浮浪の滝で修行をしていたという。智春上人は推古天皇の眼病を治癒するために祈りを捧げたところ、見事平癒されたことから、推古天皇の願いをもって勅願寺として整備されたと伝えられている。その際、誤って仏器を浮浪の滝の滝壺に落としてしまったところ、どこからともなく出現した鰐(わにざめ)が仏器をお返ししたことから『鰐淵寺』という寺号になったという。 平安時代までには、浮浪の滝を中心に蔵王権現の霊地として多くの行者が修行に励む地として栄えた。中世には、約80ともいわれる僧房が軒を連ねていたとされ、大いに隆盛を極めた大寺院であったという。現在は根本堂を中心に、神仏習合の祈りを伝える伽藍が伝えられ、多くの文化財を伝える名刹として信仰を集めている。

info

参拝情報

名称
浮浪山 鰐淵寺
(ふろうさん がくえんじ)
所在地
島根県出雲市別所町148
googleMAP
参拝時間
8:00~17:00
※入山受付時間:8:00~16:15
拝観料
大人:500円
中高生:300円
小学生:200円
※それぞれお一人当たりの料金です。
宗派
天台宗
御本尊
千手観音・薬師如来
宝物殿
アクセス
■公共交通機関
一畑電鉄『雲州平田』駅からバスで約25分。

■車
出雲空港(出雲縁結び空港)より約35分(約23 km)。
駐車場
あり(30台、無料)※ 紅葉シーズンは駐車料金が必要です