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岩山の上に建つ雄大な大堂

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かさもりじ

笠森寺

千葉県長生郡長南町

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房総半島のほぼ真ん中に位置する長南町に、伝教大師が開創したと伝えられている十一面観音様の霊地・笠森寺が伽藍を構えています。伝教大師が造立した十一面観音様をお守りするために建てられたと伝えられている観音堂は、数多の災害や戦乱を乗り越え今日まで建ち続けています。過去・現世の全ての人々をお救いになるという御本尊・十一面観音様を中心に、古代以来の祈りの空間が守り伝えられています。

巡りポイント

急峻な岩山の上に建つ観音堂は、四方を懸造とする日本唯一の「四方懸造」で建てられている勇壮な建物。戦前には、明治41年(1908)に千葉県では初となる国宝に指定された建物でした(現行法では重要文化財)。周囲には霊地であることから大切に守り伝えられた自然林が広がり、様々な動植物の営みが育まれています。

観音堂(国指定重要文化財)

  • 観音堂(国指定重要文化財)
  • 観音堂(国指定重要文化財)
  • 観音堂(国指定重要文化財)
  • 観音堂(国指定重要文化財)
  • 観音堂(国指定重要文化財)
  • 観音堂(国指定重要文化財)
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観音様の霊地を守る天空の大堂

笠森寺は、延暦3年(784)、伝教大師が楠の霊木で造立した十一面観音様を岩山に安置したことに始まると伝えられている。岩山におまつりされた十一面観音様をお守りするために、後の時代に十一面観音様の周囲に建物が建立されたという。平安時代の長元元年(1028)には、後一条天皇の願いにより、現在のように岩山の四方を囲むような日本唯一の「四方懸造」の観音堂が建立されたと伝えられている。

 

昭和33年(1958)から実施された全解体修理の際に、建物から安土桃山時代の墨書銘が発見された。このことから、現在の建物は、後一条天皇の勅願により建立された平安時代の建物が安土桃山時代に改修された建物又は安土桃山時代に再建された建物であると考えられている。

 

観音堂は61本の柱から構成されている。柱が立つ岩山は「笠森層」と呼ばれる地層の一部である。現在は風化や地震による崩落を防ぎ保護するために表面がモルタルで覆われており、モルタルの表面の色を実際の岩山表面の色味にあわせる工夫が施されている。

 

毎年2月の節分では節分会法要が執り行われるとともに、「天空の豆まき」と呼ばれる迫力ある豆まきが行われる。

感想■十一面観音様をお守りするために建物が建てられたと伺い、急峻な岩山に建つ観音堂の姿が、御本尊様に対する先人たちの篤い信仰と願いにより形づくられているように感じました。約千年間、観音様をお守りする観音堂の迫力に圧倒されました。

秘仏御本尊・十一面観音菩薩立像

  • 秘仏御本尊・十一面観音菩薩立像
    お前立・十一面観音菩薩立像と御本尊がおまつりされる厨子
  • 秘仏御本尊・十一面観音菩薩立像
    お前立・木造十一面観音菩薩立像
  • 秘仏御本尊・十一面観音菩薩立像
    「御縁の綱」
  • 秘仏御本尊・十一面観音菩薩立像
    「御縁の綱」
  • 秘仏御本尊・十一面観音菩薩立像
    木造四天王立像
  • 秘仏御本尊・十一面観音菩薩立像
    木造四天王立像
  • 秘仏御本尊・十一面観音菩薩立像
    木造四天王立像
  • 秘仏御本尊・十一面観音菩薩立像
    木造四天王立像
  • 秘仏御本尊・十一面観音菩薩立像
    木造四天王立像
  • 秘仏御本尊・十一面観音菩薩立像
    木造四天王立像
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現世と過去、すべての人々をお救いになる観音様

観音堂の内陣中央の厨子の内部には、笠森寺の秘仏御本尊・十一面観音様がおまつりされている。丑年と午年に約1カ月間御開帳される仏様である。厨子の内部におまつりされている秘仏御本尊様は、像高2メートルを超える大きなお姿をされており、岩山に接する観音堂の床板上の台座にお立ちになっているという。そのため、厨子の扉が開かれる御開帳の際には、頭部から腰までのみお参りできるという。

 

御本尊様は4本の腕を持つ四臂の十一面観音様で、錫杖を持つお姿が特徴的な観音様である。このことから、現世だけでなく過去に生きた人々をも救ってくださる観音様として信仰を集めている。

 

厨子の前にはお前立の十一面観音様がおまつりされ、四方には四天王様がおまつりされている。

 

前立観音様の御手には『御縁の綱』が結ばれ、内陣から外陣へと伸びている。お参りの方々はこの『御縁の綱』に願いを記した手ぬぐいを結び、礼拝する。『御縁の綱』は、1年の終わりが近づくと抱えるほどの大きさになり、年末にお焚き上げされる。

感想■『御縁の綱』に観音様に対する願いや観音様のことを想うお参りの方々の気持ちが溢れており、心が動きました。2026年の秋に御本尊様が御開帳されるとも伺い、ぜひお参りしたいと思っています。

観音堂におまつりされる仏様

  • 観音堂におまつりされる仏様
    木造延命地蔵菩薩像
  • 観音堂におまつりされる仏様
    木造延命地蔵菩薩像
  • 観音堂におまつりされる仏様
    木造薬師如来立像
  • 観音堂におまつりされる仏様
    木造不動明王及び二童子立像
  • 観音堂におまつりされる仏様
    【非公開】木造三宝荒神立像
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修復が続く笠森寺の歴史を伝える仏さまたち

観音堂の内陣の向かって左側の壇には、延命地蔵菩薩様がおまつりされている。金色のお身体で、右手に錫杖を、左手に宝珠を持ち、左足を踏み下げているお姿をされていて、室町時代に造立されたと考えられている。延命地蔵菩薩様は、健康長寿の御利益を授ける仏様として信仰を集めている。

 

右側の壇には、薬師如来様をおまつりしている。右の手の平をお参りの方々へ向けて「恐れを取り除き、人々を安心させる」施無畏印を結び、左手では薬壷を持つ。大らかで穏やかな表情が特徴的な薬師如来様は、地方の仏師もしくは笠森寺のお坊さんが造立したのではないかと考えられている仏様である。

 

護摩壇には、不動明王様を中心に矜羯羅童子・制多迦童子がおまつりされている。また、御本尊様の背後には、3つのお顔と6本の腕を持ち、勇ましいお姿をされている三宝荒神様がおまつりされ、御本尊様をお守りしている。

 

現在、笠森寺では仏様の修復を進めている。延命地蔵菩薩様は修復が完了し、現在薬師如来様の隣にまつられていた阿弥陀如来様の修復が進行中である。笠森寺の信仰を次世代へ伝えていくために、歴代のご住職をはじめ様々な方々が尽力されている。

感想■「笠森寺の伝承のため、私の代では仏様の修復を進めている」とお話しされたご住職の未来への眼差しに心が動かされました。おまつりされている仏様をお参りすると、凛々しく穏やかなその眼差しの中に、仏様を未来へお守りするという先人たちの信念を感じました。

二天門・仁王門

  • 二天門・仁王門
    二天門
  • 二天門・仁王門
    二天門
  • 二天門・仁王門
    風神像
  • 二天門・仁王門
    雷神像
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    閻魔大王坐像
  • 二天門・仁王門
    仁王門
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お参りの方々を迎える2つの門

駐車場から観音堂へと続く参道を進むと現れる建物が二天門。左右には、観音様の眷属である風神と雷神をおまつりするほか、閻魔大王など地獄に関係する方々のお像もおまつりしている。

 

観音堂の裏手には仁王門が建つ。門の左右には仁王像がおまつりされている。古来、坂東三十三観音霊場を巡礼する方々は第30番札所の高蔵寺(高倉観音)より南下し山々の尾根を歩いて笠森寺を目指したという。その際、仁王門から笠森寺の境内に入ったという。巡礼者が歩いた道は現在散策道として整備され、お参りの方々をはじめトレッキングを楽しむ方々が歩いている。

感想■鬱蒼とした森林を抜けた先に現れる二天門の迫力に圧倒されました。左右におまつりされている風神様と雷神様は勇ましくも、どこか親しみを覚えるお姿をされていて、自然と笑顔があふれるあたたかな空間が広がっていました。

地蔵堂・鐘楼

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    地蔵堂
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境内に祈りの音色が響く

二天門の近くの石段を登った先に六角形の構造をとる地蔵堂と鐘楼が建つ。地蔵堂には子育地蔵菩薩様がおまつりされている。また、鐘楼に吊るされている鐘を、お参りの方々どなたでも撞くことができるという。

感想■様々な方々が願いとともに鐘を撞いている姿が印象的でした。山々に響く鐘の音が、観音様に対する篤い信仰を表しているようでした。

笠森寺自然林(国指定天然記念物)

  • 笠森寺自然林(国指定天然記念物)
  • 笠森寺自然林(国指定天然記念物)
  • 笠森寺自然林(国指定天然記念物)
    子授けの楠
  • 笠森寺自然林(国指定天然記念物)
    三本杉
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    観音堂の隣で枝を広げる楠の大木
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    観音堂の隣で枝を広げる楠の大木
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古代より守り続けられている豊かな自然

笠森寺の周囲に広がる自然林は、かつて関東地方に広がっていたとされる暖地の常緑広葉樹林を伝えているという点で、昭和45年(1970)に国の天然記念物に指定された貴重な自然林。笠森寺の創建時より、当地は観音菩薩がおわす霊地であるとして樹木の伐採が禁じられ、大切に守り続けられている。

 

笠森寺の周囲の森は、スギの巨木からなるスギ林とスダジイやカシ類が主体となる常緑広葉樹林から構成され、フクロウやノウサギ、ヒメハルゼミなど500種類以上の動植物が生息しているという。

 

笠森寺の参道沿いには、幹に空いた穴をくぐり抜けることができると子宝に恵まれるという「子授けの楠」や生育に伴い3本のスギの根元が密着した「三本杉」が枝を広げている。

 

また、伝教大師が楠より十一面観音菩薩様を造立されたことから、笠森寺では楠が大切に守られており、観音堂のすぐ脇にも楠の大木が枝を広げている。

感想■笠森寺の境内を巡り、「祈り」と「自然」が両輪となって守り伝えられてきた歴史を体感することができました。枝を広げる大木からは、お参りの方々を見守ってくださっているようなあたたかさを感じました。

芭蕉句碑

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松尾芭蕉の歩みを伝える千葉県最古の芭蕉句碑

二天門の近くの岩窟の前に3基の句碑が建つ。これらの句碑は、笠森出身の俳僧で渡辺雲裡坊(わたなべ うんりぼう)の門人である五老峰故貝(ごろうほう こばい)が江戸時代の安永6年(1777)に建立したものである。3つの句碑を建立した五老峰故貝の師匠である渡辺雲裡坊の師匠が各務支考(かがみ しこう)であり、各務支考の師匠が松尾芭蕉であることから、松尾芭蕉及び各務支考、渡辺雲裡坊の句を刻んだ石碑が建てられたという。

 

中央にある句碑が芭蕉が詠んだ句を刻む芭蕉句碑。江戸時代の天和2年(1682)に笠森寺の観音堂で詠んだ「五月雨に この笠森を さしもぐさ」という句が刻まれている。「さしもぐさ」とは「よもぎ」のことであり、観音菩薩が救う一切衆生のことを表しているという。

 

向かって右にある句碑は、芭蕉の門人である各務支考(獅子庵蓮二翁)が詠んだ句を刻む句碑。「片枝に 脈や通ひて 梅の花」と刻まれている。

 

向かって左にある句碑は、各務支考の門人である渡辺雲裡坊(義仲寺雲裏翁)が詠んだ句を刻む句碑。「すへられて 尻の落着く 瓢(ひさご)かな」と刻まれている。

感想■かの有名な松尾芭蕉と同じ景観を眺めていることに感動しました。実際に笠森寺をお参りした後に芭蕉が詠んだ句を見ると、笠森寺の御本尊様の霊験を深く表現しているように感じ、短い語句の中に笠森寺の奥行のある魅力を込めた芭蕉の凄さに圧倒されました。

report

学生レポート

龍谷大学 2年

当初は建築としての印象が強くありましたが、最澄上⼈が⼭上に観⾳像を安置し、その御尊像を守護する形で観⾳堂が建⽴された経緯を伺い、⼤きな驚きを覚えました。改めて拝観すると、岩上という極めて特異な⽴地に建てられた観⾳堂が、観⾳様を守りたいという信仰の思いによって実現したものであることを実感し、深い感動を覚えました。

また、懸造りという特殊な建築様式ゆえに⽇常的な維持管理にも多くのご苦労が伴うことについてのお話を伺い、⻑い年⽉にわたり建物を守り続けることの重みを改めて実感いたしました。歴代のご住職⽅が受け継ぎ、⼤切に守り伝えてこられた寺院を引き継ぐ⽴場として、過去から託されたものをどのように現代へ適応させ、さらに未来へと繋いでいくべきかを真摯に模索されているご様⼦が強く印象に残っております。

とりわけ、建造物の維持のみならず仏像修復にも⼒を注がれているというお話からは、単に現状を保存するにとどまらず、信仰の中⼼である存在そのものを次代へ確実に伝えようとする強い使命感が感じられました。⻑年にわたり⼈々の⼼の拠り所となってきた寺院を未来へ継承していくため、ご⾃⾝の役割を問い続けながら歩まれているその姿勢に深い感銘を受け、⼤変⼼に残る学びとなりました。

history

ご由緒

延暦3年(784)、伝教大師が楠の霊木から十一面観音様を造立し、岩山の頂上におまつりしたことに歴史が始まると伝えられている。寺伝では、岩山を中心に八葉蓮華(八つの花弁をもつ蓮の花)が花開いているように見えたことから、伝教大師は十一面観音様を当地におまつりしたという。

 

長元元年(1028)、後一条天皇の勅願により十一面観音様をお守りする観音堂が建立されたと記録に残る。観音堂は四方を懸造とする日本唯一の「四方懸造」という様式で建立され、戦前の古社寺保存法のもとで、明治41年(1908)に千葉県初の国宝に指定された建物である(現在は国指定重要文化財)。

 

坂東三十三観音巡礼の第31番札所として著名な笠森寺は浮世絵や滑稽本などの題材としても取り上げられ、古来より多くの参拝者が訪れている。

info

参拝情報

名称
大悲山 楠光院 笠森寺
(だいひざん なんこういん かさもりじ)
所在地
千葉県長生郡長南町笠森302
googleMAP
参拝時間
◆4月〜9月
 午前8:00〜午後4:30
◆10月〜3月
 午前8:00〜午後4:00
※天候などにより臨時で閉堂する場合がございます。
 詳細は公式HPをご確認ください。
※ペットを連れたご参拝に関して
 ●観音堂はペットキャリーに入れてご参拝ください。
 (介助犬はそのままで可)
 ●境内、参道は必ずリードを付けてください。
拝観料
大人:300円(お一人あたり)
小人:100円(お一人あたり)
御堂や山林の維持のため拝観料にご協力下さい
宗派
天台宗
御本尊
十一面観音
宝物殿
なし
アクセス
■公共交通機関
・JR外房線
「茂原駅」下車… 茂原駅南口より小湊バス「笠森霊園」行 「笠森」下車 徒歩5分  
平日のみ:小湊バス「上総牛久駅」行 「深沢切割」下車 徒歩20分
土日祝のみ:小湊バス「長南営業所」行 「仲宿」下車 タクシー10分
・小湊鉄道
「上総牛久駅」下車 平日のみ:小湊バス「茂原駅」行  「深沢切割」下車 徒歩20分

■車
「茂原長南IC」より5km 約7分
駐車場
50台
Webサイト
https://kasamori-ji.or.jp/
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